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第1章 リハビリテーションの概要

第1節 リハビリテーションの理念

1. リハビリテーションの意味

(1) リハビリテーションの語源と意味の変遷

(2) 現代のリハビリテーションの意味

2. ノーマライゼーションとIL運動

(1) ノーマライゼーション

(2) IL(自立生活) 運動

1970年代の初め米国のカリフォルニア州に住む、ポリオによる重度の四肢麻痺をもつ青年の主張から始まり、またたく間に全米に障害者運動となって広がり、行政的な施策を変えていった。

IL運動の主張
  1. 身の回りのことその他に他人の助け(介助)を借りることは必ずしも価値の低いことではない。
  2. 職業を身につけることを最高の目標としない。
  3. 障害者の自己決定権を尊重すべきである。
  4. 脱施設、脱病院によって市民として健常者の住む社会で生活する。
  5. 障害者の自己決定権は同時に障害者自身が責任と義務を負うことを意味する。

第2節 リハビリテーション医学の概要

1. リハビリテーション医学の概要

(1) リハビリテーション医学とは

医学的リハビリテーションの中核を担う

(2) リハビリテーション医学の対象疾患

様々な疾患

(3) リハビリテーション医学の目的

疾患そのものに対する治療ではなくその疾患によりもたらされる様々な後遺症に対するアプローチ

ADLの自立など

(4) 身体障害者の動向

  1. 視覚障害
  2. 聴覚又は平衡機能の障害
  3. 音声機能・言語機能・咀嚼機能障害
  4. 肢体不自由(最も多い)
  5. 内部障害(心臓、高級機、腎臓、肝臓、小腸、膀胱・直腸、AIDS)(最も増加率が高い)

2. リハビリテーション医学の歴史

(1) リハビリテーション医学の確立

物理医学、整形外科、リハビリテーションなど

近代リハビリテーションの体系を築いたラスクの言葉

「積極的にリハビリテーションを行うリスクよりも、安静にしておくリスクのほうが大きい」。

安静にしておくリスク → 「廃用性症候群」

廃用性症候群とは

〔状態〕〔原因〕〔予防〕
筋萎縮運動の欠如運動、筋トレなど
関節拘縮

関節運動の欠如ROM訓練、
良肢位の保持
骨粗鬆症体重負荷の欠如、
筋収縮による牽引の欠如
傾斜テーブル、
起立訓練
尿路結石運動の欠如、
水分の不摂取
水分を多くとり、運動をする。
起立性低血圧立位の欠如傾斜テーブル、
起立訓練
静脈血栓運動の欠如、
同一姿勢の持続
運動、
体位変換
沈下性肺炎臥位の持続、
呼吸運動の不活性
体位変換、
呼吸の活発化
褥瘡同一臥位の保持体位変換
尿失禁排尿の機械欠如、
持続カテーテル挿入
自力での排尿
便秘運動の欠如、
不適切な食事
運動、食事療法
心理的荒廃隔離、不活動活動

(2) わが国のリハビリテーション医学の歴史

第3節 障害の概念

1. 健康、疾病、障害

(1) 健康

身体的、精神的、社会的に良好な状態である。

(2) 疾病

(3) 障害

国際障害分類など
  1. 機能障害(ex.目が見えない)
  2. 能力低下(ex.文字が読めない、歩けない)
  3. 社会的不利(ex.就労できない)

2. 国際生活機能分類(ICF)

(1) 心身機能と身体構造

(2) 活動と参加

3つに分類

分類内容責任具体例対処例
①心身機能
身体構造
障害そのもの神様目が見えない白内障手術
②活動制約個人としての活動制約個人点字が読めない点字習得
③参加制約社会への参加の制約社会点字資料が提供されないニーズの啓発

(3) 背景因子

第4節 リハビリテーションの分類

(1) 医学的リハビリテーション

医療機関で行われる機能回復訓練を主体としたリハビリテーションをいう。

(2) 教育的リハビリテーション

障害をもった学齢児を医療的管理または定期検診のもとに、学校教育を受けさせることにより、その発達を促し、社会適応性を高めるものである。

→ 特別支援教育

(3) 職業的リハビリテーション

障害者の能力を評価し、適正な職業能力を身につけるための訓練・斡旋を行う。

(4) 社会的リハビリテーション

社会生活の回復を目指すもの。

第5節 地域リハビリテーション

1. 地域リハビリテーションの定義

地域リハビリテーションとは、 障害者や高齢者が住み慣れた地域で 生活し続けることができるようにする仕組み。

2. 地域リハビリテーションの流れ

脳卒中の患者を例にすると、
発症→ 入院→ 退院→ 在宅→ 介護保険における介護認定→ ケアプラン策定→ 訪問リハビリテーション

3. 地域リハビリテーションを取り巻く諸制度

(1) 介護保険法

要介護者に対して介護給付、在宅サービスなど

運営主体 市町村

被保険者 第1号65歳以上のもの、第2号40歳以上65歳未満

(2) 障害者自立支援法

障害者の持つ能力と適正に応じて自立した日常生活、社会生活を営むことを目指す。

障害者の原則1割負担

就労支援

自立支援給付および地域生活支援給付

4. 地域医療連携

(1) 地域医療連携

地域の様々な専門家の連携により、 一人一人の障害者、高齢者のQOLを高める。

(2) 生活環境

福祉用具の活用、家屋改修等

(3) 訪問リハビリテーション

在宅の利用者に対して、 機能訓練、ADL訓練など。 医療保険、介護保険で行われる。

(4) 通所リハビリテーション

デイケアセンターへ通所して訓練。

5. 地域リハビリテーションの実際

訪問リハビリテーションにおいて、 在宅でのPT、OT、マッサージ師による訓練


第6節 リハビリテーション医学の諸段階

(1) 急性期リハビリテーション

救急病院において集中治療、 廃用性症候群の予防、 ADLの早期獲得、早期量など、病棟で行われる。

(2) 回復期リハビリテーション

症状が安定した後、本格的な機能訓練、ADL訓練、機能訓練、職業全訓練などを行う。

(3) 維持期リハビリテーション

退院後、在宅や施設で行われる。機能維持が主な目的となる。

第7節 リハビリテーション・チーム

1. リハビリテーション・チームの考え方

一人の患者に多くの専門スタッフが関わる。カンファレンスを通して共通理解・意思疎通が図られる。

2. リハビリテーション・スタッフの役割

(1) リハビリテーション専門医

診断、処方、リーダーとしての役割、専門医師との連携

(2) リハビリテーション看護師

わが国ではその制度はない。通常の看護師の業務に加えて、ROM訓練、ADL訓練、良肢位の保持なども行う。

(3) 理学療法士

対象身体に障害のある者
目的基本的な動作能力の回復
手段運動療法、物理療法(電気刺激、マッサージ、温熱)

(4) 作業療法士

対象身体または精神に障害のある者
目的応用的動作能力や社会的応用能力の回復
手段工芸、手芸、その他の作業を行わせる

(5) 言語聴覚士

言語・音声・聴覚障害者に対する評価とコミュニケーション回復訓練、摂食嚥下障害の回復訓練をする。

(6) 義肢装具士

義肢や装具を製作し適合をはかる。

(7) 医療ソーシャル・ワーカー

(8) 臨床心理士

患者の心理を分析し、その結果を他のスタッフと共有する。

患者の心理指導を行い、精神的な悩みを減少させ、モチベーションを高める。

(9) 保健師

(10) 介護支援専門員

介護保険における介護計画の策定

(11) 介護福祉士

(12) 社会福祉士

福祉に関する相談、助言、指導、その他の援助を行う。
社会福祉に関する指導的立場

(13) 臨床工学技士

人工呼吸器、除細動器、透析器などの機器の操作・保守


第8節 医学的リハビリテーションの流れ

(1) 情報収集

医療面接(現病歴、既往歴、住居、周辺環境等の聞き取り)

(2) 診察・検査

患者の状態、症状等について必要な診察・検査を行う。

(3) 診断・処方

医師は、診察、検査結果などをもとに診断・処方を行う。

(4) 評価とカンファレンス

リハビリテーションスタッフがそれぞれ評価を行って持ち寄り、情報共有を図り、治療プログラムを決定する。

(5) 治療と退院

それぞれのスタッフにより治療が行われる。退院が近づけば家庭や社会復帰を目指して治療を実施

(6) 社会復帰

退院後、家庭内自立、施設内自立、職業復帰等を目指す。