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第1節 脳血管障害(脳卒中)のリハビリテーション
2. 脳血管障害の分類
- 頭蓋内の血管が破綻して出血
- 脳血管障害の2~3割
- 大脳半球での出血が8割、その他、小脳、脳幹等
- 減少傾向
- くも膜下腔にある栄養血管の破綻
- 脳血管障害の1割
- 脳動脈瘤、脳動脈奇形等が原因
- 脳梗塞は脳血栓症 + 脳塞栓症、脳血管障害の6~7割
- アテローム動脈硬化症による血管狭窄による虚血状態
- 緩やかに発生し2から3日で完成
- 心臓弁膜症、心疾患、アテローム硬化症由来の血栓が脳に流れついて血管を閉塞
- 急激に発生
- 流れ着いた場所により多彩な症状
24時間以内に回復、内頸動脈由来、椎骨動脈由来のものがある。
- 発症直後は弛緩性麻痺、次第に痙性麻痺。
この時期、腱反射の亢進、病的反射の出現をみる。
- 運動障害の状態
- 体性感覚の障害 正常、鈍麻~脱失、過敏まで様々
- 視床痛:麻痺側の強い痛み
- 肩手症候群:上肢の強い痛み
- 同名半盲:左右の目の一側視野の欠如
- 構音障害 仮性球麻痺、球麻痺、小脳病変等
- 失語症 ブローカー失語、ウェルニッケ失語等
失行症、失認症、失語症、注意障害、記憶障害、認知症等
- 食べ物を口に運び、咀嚼し、嚥下することの障害
- 仮性球麻痺、球麻痺により喉頭・咽頭筋の麻痺、利き手の麻痺、三叉神経麻痺等
程度は様々、ジャパン・コーマ・スケールで判定
うつ症状、環境不適応、認知症等
排尿や排便のコントロールができなくなる。
- 廃用性症候群
- 関節拘縮:肘関節屈曲、尖足等
- 肩手症候群:上肢の疼痛、腫脹、関節拘縮、反射性交感性ジステロフィー
- 心肺機能低下、筋力・持久力低下、起立性低血圧等
意識障害の有無、バイタルサインのチェック等
a. ブルンストロームステージの原則
ステージ | 可能な運動 | 筋緊張 |
1 |
随意運動なし | 弛緩 |
2 |
随意運動なし 連合反応による共同運動 |
痙性発現 |
3 |
共同運動を随意的に起こせる |
痙性最大 |
4 |
共同運動から逸脱した運動(分離運動) |
痙性やや弱まる |
5 |
運動の分離が進む
| 痙性減少 |
6 |
運動が自由に可能 協調運動正常 |
正常 |
b. 上肢
ステージ | 可能な運動 |
1 |
随意運動なし |
2 |
随意運動なし 連合反応による共同運動 |
3 |
共同運動を随意的に起こせる。
- 屈筋共同運動(弓矢の弓を引くポーズ)
- 肩甲帯 挙上・後退
- 肩関節 屈曲・外転・外旋
- 肘関節 屈曲
- 前腕 回外
- 手関節 掌屈
- 手指 屈曲
- 伸筋共同運動(変身の構え)
- 肩甲帯 前方突出
- 肩関節 伸展・内転・内旋
- 肘関節 伸展
- 前腕 回内
- 手関節 背屈
- 手指 伸展
|
4 |
分離運動
- 手を腰の後方にまわす
- 腕を前方水平位へ(前へならえ)
- 肘90゜屈曲位で前腕回内・回外
|
5 |
運動の分離が進む
- 腕を横水平位へ
- 腕を頭上まで挙上
- 肘伸展位で回内・回外
|
6 |
運動が自由に可能 協調運動正常 |
c.下肢
ステージ | 可能な運動 |
1 |
随意運動なし |
2 |
下肢の随意運動がわずかに可能 |
3 |
共同運動を随意的に起こせる
- 屈筋共同運動
- 股関節 屈曲・外転・外旋
- 膝関節 屈曲
- 足関節 背屈・内反
- 足趾 伸展(背屈)
- 伸筋共同運動
- 股関節 伸展・内転・内旋
- 膝関節 伸展
- 足関節 底屈・内反
- 足趾 屈曲(底屈)
座位や立位で股・膝・足関節の屈曲が可能
|
5 |
共同運動から逸脱した運動(分離運動)
- 座位で足を床上に滑らせながら膝屈曲90°以上可能
- 座位でかかとを床につけたまま足関節の背屈が可能
|
5 |
運動の分離が進む
- 立位で股関節を伸展したまま、膝関節の屈曲が可能
- 立位で患側足部を少し前方に出し、膝関節を伸展したまま、足関節の背屈が可
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6 |
- 立位で股関節の外転が骨盤挙上による外転角度以上に可能。
- 座位で内側・外側のハムストンリングスの交互収縮により、下腿の内旋・外旋が可能
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運動失調の有無、関節可動域、感覚・知覚、高次脳機能、知的機能の検査等
しばしば見られるリスク
- 全身状態の悪化:基礎疾患(糖尿病、心疾患等)に注意
- 起立性低血圧
- 肩関節亜脱臼
- 異所性骨化:暴力的な可関節可動域訓練により内出血を繰り返した結果
- 歩行訓練時の転倒:施術社は麻痺側から介助すること
アンダーソン・土肥の基準(訓練の中止基準)5>
Ⅰ.運動を行わないほうがよい場合
- 安静時脈拍数120/分以上
- 拡張期血圧120以上
- 収縮期血圧200以上
- 労作性狭心症を現在有するもの
- 新鮮心筋梗塞1ヶ月以内のもの
- うっ血性心不全の所見の明らかなもの
- 心房細動以外の著しい不整脈
- 運動前すでに動悸、息切れのあるもの
Ⅱ.途中で運動を中止する場合
- 運動中、中等度の呼吸困難、めまい、嘔気、狭心痛などが出現した場合
- 運動中、脈拍が140/分を越えた場合
- 運動中、1分間10個以上の期外収縮が出現するか、または頻脈性不整脈(心房細動、上室性または心室性頻脈など)あるいは徐脈が出現した場合
- 運動中、収縮期血圧40mmHg以上または拡張期血圧20mmHg以上上昇した場合
Ⅲ.次の場合は運動を一時中止し、回復を待って再開する
- 脈拍数が運動時の30%を超えた場合、ただし、2分間の安静で10%以下にもどらぬ場合は、以後の運動は中止するかまたは極めて軽労作のものにきりかえる
- 脈拍数が120/分を越えた場合
- 1分間に10回以下の期外収縮が出現した場合
- 軽い動悸、息切れを訴えた場合
6. 急性期のリハビリテーション
拘縮(マン・ウエルニッケ拘縮)、廃用性症候群の予防のため良肢位を保持する。
背臥位での良肢位
- マットレスは硬めのものとする。柔らか過ぎると股関節の屈曲拘縮を誘発する。
- 枕は低めが良い。
- 両肩、両骨盤は水平を保つ。
- 患側の肩の下に小クッション(砂袋、タオルなど)を入れて肩の落ち込みを防ぐ。
- 肘から前腕の下にクッションを入れて腕を高挙する。
- 手関節背屈、手指は軽度屈曲位とする。
- 股関節内外旋中間位。
- 膝関節軽度屈曲位、ただし、下肢屈曲パターンの強い場合は伸展位。
- 足関節は底背屈0度。
病態により判断
- ポジショニング
- 体位変換:2時間毎
- 関節可動域訓練:主に他動的
- その他(セルフケア訓練、座位保持、車椅子操作等)
30分の座位保持が可能になれば開始、発症後2,3週間~6ヶ月までの間
肩関節亜脱臼、
肩手症候群、
深部静脈血栓症、
痙性による変形等の予防
各種評価を行い、機能障害をチェックしておく
それぞれのADLの可否だけでなく、どのように行っているか、できない場合、その理由について等も評価する必要がある。
- カンファレンスを行いスタッフ間で情報・目標の共有
- 神経筋最教育(ボバース法、ブルンストローム法、PNF)
- マット上訓練
- 平行棒内立位、杖歩行(T字杖、4脚杖)、実用歩行
- ADL訓練
- 上肢機能訓練
- 利き手交換訓練
退院後、自宅や施設において、機能維持を目的とした取り組みを行う。