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第3節 脳性麻痺のリハビリテーション

1. 脳性麻痺の概念

(1) 定義

①原因の発生時期受胎から新生児(生後4週間以内)までの間
②原因周産期仮死、低体重出生、核黄疸など
③病変脳の非進行性で永続的な損傷
④発病時期遅くとも2歳までに発病
⑤症状運動発達障害、異常運動発達
⑥除外項目進行性疾患、一過性の運動障害

(2) 原因と発生率

●低出生体重児、出生時仮死、重症横断

(3) 分類

特徴筋緊張
①痙直型 強い筋緊張
腱反射亢進
→ 関節の変形・拘縮が起こりやすい
脳性麻痺全体の約50%を占める。
痙性麻痺を呈し,両麻痺,四肢麻痺となる。
痙性
②強剛型 屈筋,伸筋ともに強い筋緊張
関節を他動的に動かすと、鉛管現象や歯車現象を示す。
→ 関節は変形・拘縮がきわめて起こりやすい。
固縮
③アテトーゼ型 四肢および体幹に不随意運動
筋の緊張は低いところから高いところへ動揺
頭を中間位で固定したり,姿勢を保持することが困難
動揺
④失調型 身体の平衡とバランスの障害
歩行をはじめいろいろな動作が不安定で,アンバランス
ときに振戦
筋緊張は,一般的に低下。
多くは低下
⑤弛緩型 常に筋緊張が低い
抗重力姿勢すなわち直立姿勢が保てない
体力的にも弱く,風邪をひきやすく,肺炎を併発しやすい。
低下
⑥混合型 上記のタイプの症状をいくつかあわせもっている

(4) 早期診断

1)脳性麻痺が疑われる場合
  1. 重症新生児黄疸
  2. 痙攣発作
  3. 異常低体重
  4. 全身筋弛緩
  5. etc
2)早期治療が望ましい理由
  1. 乳児の脳は、可逆性,順応性が強く、早期の訓練によって、正しい運動パターンを獲得しやすい。
  2. 運動発達障害から起こる二次的な知能の発達障害を予防する。
  3. 立ち直り反応、保護伸展反応、平衡反応などの正常姿勢反応の発達の妨げとなる異常な姿勢反射を抑制しやすい。
  4. 変形・拘縮を予防しやい。
  5. 家族の協力を得やすい。

2. 脳性麻痺の評価

(1) 筋緊張

筋緊張現象
①痙直ジャックナイフ現象(折りたたみナイフ現象) →
他動的に屈伸しようとすると、初め、抵抗があるが、それを超えると急激に抵抗が無くなり、容易に屈伸する。
②弛緩関節可動域拡大
③強剛鉛管現象 →
他動的に屈伸しようとすると、あたかも鉛の管を曲げ伸ばしするときのように、終始抵抗が感じられる。
歯車現象 →
同様に、他動的に屈伸しようとすると、歯車が中に入っているかのように、ガクガクしながら、屈伸する。
④動揺不随意運動

(2) 姿勢反射

  1. それぞれの姿勢,あるいは動作中において,異常緊張反射などの出現するか
  2. 立ち直り反応,平衡反応,上肢の保護伸展反応などは正常か
について
  1. 姿勢の非対称性
  2. 異常運動が原始的パターンか,病的パターンによるものか
  3. 代償部分とそのパターン
を評価する。

(3) 発達検査

周産期医療の発達 → 超低出生体重児の増加 → 障害の重度重複化

知的障害、視力障害、聴力障害、言語障害、その他の障害

遠城寺式発達検査を用いて運動年齢、精神活動年齢,言語発達について評価する。

資料:遠城寺式発達検査

(4) 拘縮・変形の評価

(5) 重複障害の評価

3. 脳性麻痺のリハビリテーション

(1) 療育

治療 + 保育

教育スタッフ、医療スタッフ、親、etc

(2) 理学療法

ROM訓練や筋力増強訓練といった基本訓練に加えボバース法、ボイタ法を実施

異常な原始反射や筋緊張を抑制し, より正常な姿勢反射, 運動パターンを引き出す。

(3) 装具療法

坐位や立位保持のための装具,歩行補助のための下肢装具,体幹装具,車椅子などの補装具が用いられている。

(4) 手術療法

アキレス腱延長術、内転筋切除術、腱移行術、矯正骨切術など