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第6節 骨関節疾患のリハビリテーション

1. 肩関節周囲炎(五十肩)

(1) 肩関節周囲炎とは

(2) 肩関節周囲炎の評価

  1. 疼痛テスト(痛みの出る動作、程度)
  2. 関節可動域テスト(肩甲上腕リズムなども)
  3. MMT
  4. ADLテスト(上着の着脱、結滞動作)

(3) 肩関節周囲炎の治療

①物理療法
②関節可動域訓練

関節モビリゼーション、ROM訓練、ストレッチ

③コッドマン体操
コッドマン体操
  1. 患側の手にアイロン,鉄アレーなどの重りを持つ
  2. 健側手を机等に支え、上体を前屈
  3. 上体を前後左右に揺らしながら
  4. 上肢を脱力させて
  5. 振り子様に運動させる
④棒体操

1~1.2mの棒を両手でもって、 万歳(屈伸),、横振り(外転)、肘を曲げての内・外旋などの運動を行う。

⑤筋力増強訓練

鉄アレー,重錘バンドなどで、 肩関節周囲の筋力強化訓練

2. 腰痛症

(1) 腰痛症とは

主な腰痛: 椎間板ヘルニア、 腰部脊柱管狭窄症、 腰椎分離症、すべり症、 変形性脊椎症、 腰椎圧迫骨折、 腰椎捻挫、 椎間関節症、 筋筋膜性腰痛、 etc

(2) 腰痛の評価

疼痛テスト、 関節可動域テスト(SLRなど)、 MMT、 感覚検査、 反射テスト、 ADLテストなど

(3) 腰痛症の治療

①物理療法

温熱療法(ホットパック、極超短波療法など)、 腰椎牽引療法

②関節可動域訓練

腰椎、骨盤の可動性

③筋力増強訓練

背筋,腹筋,殿筋,大腿四頭筋などの抗重力筋の強化と,その拮抗筋である腸腰筋,股関節屈筋のストレッチによって直立姿勢のバランスをはかる。

④ADL指導

重い物持ち上げ方、作業姿勢、寝返り、マットレスの堅さなど

⑤装具療法

軟性コルセット → 腹圧を高める

⑥腰痛体操(ウイリアムス体操)
ウイリアムス体操の方法
腰痛体操
  1. 腹筋などの筋力強化
  2. 腸腰筋などの拮抗筋のストレッチ
  3. 腰椎から骨盤リズムの調整
を目的とした,腰痛および予防のための体操である。

第3節 変形性関節症

ベストセレクション「変形性関節症」

3. 変形性関節症

(1) 変形性関節症とは

  1. 主として中高年代に多く発症
  2. 骨,関節の老化に伴う退行性,増殖性の病変
  3. 一次性変形性関節症と何らかの原疾患に続く二次性変形性関節症
  4. 膝、股、椎間関節などの荷重関節に好発(この順で多い)

症状: 運動痛、 荷重痛、 筋力の低下・萎縮、 関節拘縮、 腫脹、 運動障害、 X線像で,関節縁の尖鋭化,骨棘形成,関節裂隙の狭小化

(2) 変形性関節症の評価

  1. 疼痛検査
  2. 大腿脛骨角(176゜の軽度外反)(O脚、X脚)
  3. 関節可動域テスト
  4. MMT
  5. 整形外科的検査(パトリックテスト、トーマステストなど)
  6. 動作の観察(立ち上がり、階段昇降など)

(3) 変形性関節症の治療

人工関節置換術、痛みを抑えるための薬物療法、 保存的療法としての理学療法が行われる。

①物理療法

急性期にはアイスパック等の寒冷療法
慢性期にはホットパック、マイクロなどの温熱療法

②関節可動域訓練

関節モビリゼーションにより関節腔を広げた後、 ROM訓練を実施する。

③筋力増強訓練

関節に負担をおけないよう等尺性運動で行う。
マッスルセッティング

④水中歩行

プールの中で運動する。 免荷作用、水の抵抗を利用。

⑤装具療法

足底装具、膝装具


4. 大腿骨頚部骨折

(1) 大腿骨頚部骨折とは

骨粗鬆症のある高齢者が転倒した時にしばしば起こる。

強い疼痛、歩行不能となる。

骨折部位により、 内側骨折(関節包内で骨折、骨癒合しにくい)と 外側骨折(関節包外で骨折)に分類する。

外科的治療法として骨折部の固定、人工関節置換術が行われる。

ガーデンの分類

(2) 大腿骨頚部骨折の評価

  1. 術前評価
    ADL、歩行、生活自立度など
  2. 術後評価

    疼痛テスト、 形態(脚長差、周径など)、 関節可動域テスト(股関節、膝など、脱臼に注意)、 MMT(股関節周囲筋)、 動作観察

(3) 大腿骨頚部骨折の治療

人工骨頭置換術後を想定した理学療法を以下に述べる。

①物理療法

ホットパック、超音波療法など
※極超短波療法は禁忌

②関節可動域訓練

過度な動きは脱臼のリスク

③筋力増強訓練

マッスルセッティングから開始、抵抗運動へ進む

④ADL訓練

側臥位では患側を上にすること。
内転位委にならないように(脱臼の危険性)
松葉杖、T字杖による歩行
靴の着脱訓練、自助具の活用


5. 関節リウマチ

(1) 関節リウマチとは

  1. 膠原病の一種、自己免疫疾患
  2. 関節炎を主症状とする全身疾患
  3. 慢性的に経過する非常に治りにくい難病
  4. 進行性かつ多発性の関節炎
  5. 増悪と寛解を繰り返す
  6. 男女比1:4で女性に多い
  7. 発症年齢は、20歳代前半から30歳代前半
アメリカ・リウマチ協会の診断基準
  1. 朝のこわぱりが少なくとも1時間
  2. 三つ以上の関節の腫れ
  3. 手首,中手指節関節(MP)または近位指節間関節(PIP)の腫れ
  4. 対称性の腫れ
  5. 手のX線変化
  6. 皮下結節
  7. リウマトイド因子

7項目中4項目以上あれぱRAとして分類される。除外項目なし

(2) 関節リウマチの評価

①全身状態の評価

炎症、変形のある関節の場所と程度の把握、 腎炎、肺炎、血管炎、眼症状の有無

②形態計測

周計、四肢長の計測

③関節可動域テスト

拘縮、強直、異常可動性、動揺の有無

④筋力検査

MMTや配慮した方法による

⑤ADL検査

バーセル・インデックスなどを用いる

スタインブロッカーの進行度分類
stage1骨に所見がないか,あっても軽度の骨萎縮
stage2骨萎縮と軽度の骨軟骨の破壊
stage3関節の破壊と変形を伴うもの
stage4さらに高度の破壊または強直に至るもの
スタインブロッカーの機能障害分類
class1健康人と同様で,機能障害はない
class2多少の運動制限はあるが,普通の生活ができる
class3日常生活動作や普通の作業がはなはだ困難である
class4寝たきりまたは車椅子生活で介助が必要

(3) 関節リウマチの治療

  1. 理学療法:関節破壊と変形の予防、可動域、筋力の維持により生活の質を維持
  2. 薬物療法:消炎鎮痛剤・抗リウマチ薬など
  3. 手術療法:滑膜切除術、人工関節置換術

①物理療法

②関節可動域訓練

愛護的に実施

③筋力増強訓練

関節に負担をかけないように注意して実施

④ADL指導

日常生活において関節に負担をかけないようにする。例えばレバー式のドアノブ

⑤装具療法

変形の予防、免荷、関節にかかるストレスの軽減を目的として様々な装具を用いる

6. 末梢神経損傷

(1) 末梢神経損傷とは

ニューラプラキシア
ニューロアプラキシア
アクソノトメーシス
アクソノトメーシス
ニューロトメーシス
ニューロトメーシス

臨床症状

①運動麻痺

支配領域の運動麻痺、筋力低下、筋萎縮

②知覚麻痺

支配領域の感覚麻痺(表在感覚、運動核等)

③自律神経障害

発汗障害、血管運動障害

主な末梢神経麻痺

①腕神経叢麻痺

分娩時、オートバイ事故などにおける引き抜き損傷等

②胸郭出口症候群

胸郭出口における絞扼により起こる。

③橈骨神経麻痺

上腕部の骨折や圧迫などで起こり,肘関節の伸展,手指の伸展が障害される。
「下垂手変形」

下垂手
④正中神経麻痺

前腕の回内,手指の屈曲,母指の対立などが障害される。
「猿手変形」

猿手
⑤尺骨神経麻痺

:深指屈筋尺側,骨間筋などの麻痺。「鷲手変形」

鷲手
⑥脛骨神経麻痺

下腿三頭筋の麻痺で「踵足変形」

⑦腓骨神経麻痺

前脛骨筋,腓骨筋,指伸筋の麻痺で、「下垂足変形」

下垂足

(2) 末梢神経損傷の評価

反射検査、関節可動域検査、MMT、知覚検査、電気診断

(3) 末梢神経損傷の治療

保存療法、外科的神経修復術等

①物理療法

低周波電気療法による筋萎縮の予防、鎮痛を目的とした経皮的電気刺激療法

②関節可動域訓練

関節拘縮の予防を目的として行う。

③神経筋再教育

筋力に応じて筋収縮訓練

④装具療法
  1. 正中神経麻痺:長・短対立副子
  2. 橈骨神経麻痺:コックアップスプリント、トーマススプリント
  3. 尺骨神経麻痺:ナックルベンダー
  4. 腓骨神経麻痺:プラスティック製短下肢装具
  5. 脛骨神経麻痺:短下肢装具